当て逃げされたら被害届を提出すべき!対応方法を徹底解説

当て逃げされたら被害届を!対応方法

「自分の車に接触されたのにもかかわらず、そのまま立ち去られてしまった」、「駐車場に戻ったら車に傷が付いていた」などの当て逃げ被害に遭われた方の相談をお受けすることは珍しくありません。

当て逃げ被害に遭ったら、直ちに警察に被害届を提出するように心がけてください。初期対応が遅れると、犯人を発見できる可能性は低くなるので、注意しましょう。

もしもの場合に備えて、当て逃げされたときの正しい対応や手続をチェックしておきましょう。

この記事では、当て逃げの基礎知識や、当て逃げに対して発生する責任、被害届の提出方法と注意点、当て逃げに気付かなかった場合の対応方法について説明します。

 
  • 当て逃げすると措置義務違反と安全運転義務違反で違反点数が加算される可能性がある
  • 保険請求に必要な事故証明書の発行には警察への通報が必要
  • 当て逃げは被害と加害者を認識してから3年で時効を迎えるので注意
 
琥珀法律事務所の代表弁護士 川浪芳聖の顔写真

この記事の監修者

弁護士:川浪 芳聖(かわなみ よしのり)

弁護士法人琥珀法律事務所 代表弁護士
所属:第一東京弁護士会

当て逃げとは事故後に現場から立ち去ること

当て逃げとは、物損事故を起こしたにもかかわらず、その場から立ち去る行為のことです。一方、人身事故を起こしたにもかかわらず、その場から立ち去る行為はひき逃げといい、当て逃げと区別されています。なお、当て逃げもひき逃げもどちらも、法律上の用語ではありませんが、一般的によく用いられています。

物損事故における「物」には、車や自転車、ガードレールといった物品や設備の他、犬や猫などのペットも含まれます。

こちらでは、当て逃げに該当する事例や、ひき逃げとの違い、当て逃げした場合の違反点数についてご説明します。

当て逃げに該当する事例

当て逃げに該当する主な事例には、以下のようなものがあります。

 
  • 駐車場で他の車に接触し、逃走した
  • 走行中に他の車と接触事故を起こし、逃走した
  • 走行中にガードレールや建物に衝突し、逃走した
  • 走行中に他人のペットを撥ね、逃走した

駐車場での事故については、「駐停車時に隣の車に接触した」、「車から降りるときに隣の車にドアをぶつけた(ドアパンチ)」などのケースがあります。

また、法律上では犬や猫などの動物は物とみなされますので(民法第85条)、飼い主がいるペットを跳ねて逃走した場合も当て逃げ扱いになります。

当て逃げとひき逃げの違い

当て逃げと混同されやすいケースにひき逃げがありますが、両者には明確な違いがあります。

最も大きな違いは、事故によって人に死傷の結果が生じたかどうかです。人がケガをした場合と人が死亡した場合はひき逃げ、物の損害のみは当て逃げとされます。

当て逃げとひき逃げはどちらも行政処分や刑事処分の対象となります。ただし、当て逃げよりもひき逃げの方が、損害賠償額や処分は大きくなります。

当て逃げによる違反点数

当て逃げをした場合、行政処分として運転免許の違反点数が加算されます。当て逃げで加算されるおそれのある違反点数は以下のとおりです。

 
  • 措置義務違反 物損:5点
  • 安全運転義務違反:2点

措置義務違反とは、道路交通法第72条に定められた交通事故の場合の措置に違反することです。同条では、交通事故があった場合、運転者は直ちに車の運転を停止し、負傷者を救護したり、道路における危険防止措置を講じたりすることが義務づけられています。

当て逃げは、交通事故があったにもかかわらず、必要な措置を講じずにその場を立ち去る行為なので、措置義務違反に該当します。なお、接触したことに気づかなかった場合は、措置義務違反に該当しませんが、接触したことに気づいた後もなお警察に報告しなかった場合には、やはり措置義務違反に問われることとなります。

一方、安全運転義務違反は、運転者が安全運転を行う義務を怠ることです。当て逃げは運転者の前方不注意や安全不確認が原因である場合がほとんどで、この場合は安全運転義務違反に該当します。

(参考:e-Gov法令検索『道路交通法第七十二条』/https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_4-Se_2-At_72

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当て逃げに対して発生する責任

通常の物損事故であれば、民事上の賠償責任は負いますが、原則として行政処分や刑事処分の対象にはなりません。

しかし、当て逃げ事故を起こした場合は、刑事責任・民事責任・行政責任の3つを負うことになります。

こちらでは、当て逃げ事故によって生じる3つの責任とその内容についてご説明します。

刑事責任

刑事責任とは、犯した罪に対して罰金刑や拘禁刑といった刑罰を受ける責任のことです。

物損事故の場合、基本的に加害者側に刑事責任は生じません。しかし、当て逃げは悪質な逃走行為であるため、刑事責任を問われる可能性があります。

具体的には、交通事故を起こしたときの措置を定めた道路交通法第72条第1項前段の規定に違反するとして、同法第117条の5の規定に基づき、一年以下の拘禁刑または十万円以下の罰金に処されます。

(参考:e-GOV法令検索『道路交通法第百十七条の五』/https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_8-At_117

民事責任

民事責任とは、被害者に与えた損害について、加害者が負う賠償責任のことです。

ひき逃げの場合は、民法と自動車損害賠償保障法に基づいて責任が問われます。一方、当て逃げは物損事故なので、民法のみに基づいた責任が発生します。

具体的な賠償責任は、事故によって損害を与えた物の修理費、代車費用、買い替え諸費用等です。

賠償金額がどのくらいになるかは、事故によって生じた損害の範囲や程度によって異なりますが、被害者側が提出した領収書や請求書などの証拠に基づいて算定されます。

行政責任

交通事故における行政責任とは、国や地方自治体による運転免許の停止や取り消しを受けることです。当て逃げの場合、運転免許の違反点数が7点加算される可能性があり、この場合は行政処分の前歴が0回であっても30日間の停止処分を受けることになります。

なお、前歴が1回ある場合は90日間の停止処分、2回以上の場合は取り消し1年(免許取消歴等保有者が一定期間内に再び免許の拒否や取り消し、6カ月を超える運転禁止処分を受けた場合は3年)と、より重い処分が科せられるでしょう。

免許の取り消しを受けた場合、取消処分者講習を受けた上で、運転免許試験場で試験を受けるか、あるいは指定自動車教習所に通ってから試験に臨んで免許を再取得する必要があります。

 

当て逃げ被害について、お気軽にご相談いただけます。

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当て逃げされたら被害届を!対応方法を紹介

当て逃げされたら被害届を!対応方法を紹介!

当て逃げされたことに気付いたら、直ちに警察へ被害届を提出しましょう。被害届の提出が遅れると、犯人の発見や確保が困難になる可能性が高くなるので、速やかに手続を行うことが大切です。

こちらでは、当て逃げされた場合の対応方法や、手続を行う際のポイントをご説明します。

警察へ被害届を提出する

当て逃げの場合、犯人は現場を立ち去ってしまうため、加害者が分からないケースがほとんどです。

犯人を一刻も早く見つけ出すためにも、警察に通報し、被害届を提出しましょう。被害届を提出すると、警察が早期に捜査を開始できますので、犯人が見つかる確率は高くなります。

また、警察に通報をしないと交通事故証明書が発行されませんので、加害者が分かっていない場合や証拠が残っていない場合でも、躊躇せずに警察に連絡しましょう。

なお、被害届は、最寄りの警察署にも提出することができます。警察はその事故が管轄区域であるかどうかにかかわらず、被害届があった場合は受理しなければならない決まりがあるため、被害者側が管轄の警察を調べる必要はありません。

証拠を確保する

警察に通報したら、できるだけ証拠の確保に努めます。

もし、加害者の車両を目撃していたのなら、覚えている限り車種やナンバーをメモしておきましょう。

また、スマートフォンのカメラで当て逃げされた箇所や現場の状態、当て逃げによる損傷箇所などを撮影しておきます。駐車中の当て逃げなら、駐車の状態が分かるように車の全体像を撮っておきましょう。

事故の瞬間を目撃していなくても、ドライブレコーダーが搭載されている場合は映像が証拠になります。ドライブレコーダーは時間が経過するとデータが上書きされてしまう機種が多いので(保存期間が限定されている機種が多いので)、当て逃げされたらすぐに録画を停止し、データを保存しておきましょう。また、自分の車にドライブレコーダーが搭載されていなかったとしても、事故現場に居合わせた他の車のドライブレコーダーに映像が残っている場合もありますので、他の車の運転手にドライブレコーダーの搭載の有無を確認した上で、映像提供の協力を求めることも検討しましょう。

ドライブレコーダーを搭載していなかった場合でも、現場周辺にある防犯カメラの映像に証拠が残されている可能性があります。これらの防犯カメラの映像については、個人で提供を依頼しても拒否されることがほとんどですので、基本的には、警察に被害届を提出し、警察の捜査にお任せすることになることになります。

保険会社へ連絡する

交通事故の場合、加害者が加入している任意保険によって損害賠償金が支払われることになります(ただし、加害者が任意保険に加入していない場合には、この限りではありません)。しかし、当て逃げの場合、事故直後に加害者が判明しているケースは少なく、犯人の発見から賠償を得るまでに時間がかかる傾向にあります。

その間、車両の傷や破損を放っておくことに抵抗がある場合は、ご自身が加入している任意保険の車両保険を利用して、もしくは自ら一旦立て替えて修理するという方法もあります。

車両保険を利用する場合は、自身の加入する任意保険会社に連絡して車両保険を利用したい旨を伝える必要があります(保険会社やプランによっては当て逃げ被害が補償対象外となっていることもあるので、確認しましょう。)。

補償内容を確認するためにも、当て逃げに遭ったら加入している保険会社にすぐ連絡することをおすすめします。

損害賠償を請求する

警察の捜査によって犯人が見つかった、あるいは犯人が自首してきた場合は、加害者を特定できますので、その加害者に対して損害賠償を請求できます。

具体的には、車両の修理代や買い替え諸費用、被害によって自走できずレッカーを使った場合の費用や、修理・買い替えのために利用した代車の費用などの賠償請求を検討することになります。

なお、修理代は必要かつ相当な範囲で実費のみを請求できます。当て逃げ事故とは関係ない箇所を修理したり、過剰な補修などを行った場合は補償対象外となるので注意が必要です。

また、事故の結果、買い替えが必要(相当)となった場合には、被害車両の時価額から下取価格を控除した買い替え差額と、買い替えにともなって発生した諸費用を請求できます。

弁護士へ相談する

当て逃げの加害者が見つかったら、その加害者と示談交渉を開始します。

加害者が任意保険会社に加入していた場合は、保険会社の担当者と示談交渉することになります。一方、被害者側に過失がない場合、被害者が加入している任意保険会社は被害者に代わって示談交渉を担当することはできません。

その場合、被害者自身が加害者側と示談交渉しなければならなくなりますが、被害者にとって不利な条件(加害者の認識や意向を前提に算出した和解案)を提示されるおそれがありますので、慎重に対応することが重要です。

自分で加害者側と示談交渉するのは難しいと思ったら、弁護士に相談して示談交渉を任せることも検討しましょう。

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当て逃げの被害届を提出するときの注意点

当て逃げの被害届を警察に提出する際は、時効や必要な書類について注意する必要があります。

特に、時効については、一定期間を過ぎてしまうと当て逃げ被害の損害賠償ができなくなってしまうため要注意です。

こちらでは、当て逃げの被害届を出す際に気を付けたいポイントを2つご説明します。

損害賠償の時効がある

物損についての損害賠償請求権は、恒久的なものではなく、被害者が損害および加害者を知った時から3年間で消滅時効にかかると定められています(民法第724条)。

3年が経過してしまうと、その当て逃げ被害について損害賠償請求ができなくなりますので(加害者は消滅時効を援用することで、賠償義務を免れることができますので)、当て逃げに気付いたら速やかに被害届を提出しましょう。

例外として、当て逃げ被害そのものに気付いていない場合や、加害者が分からない場合は、当て逃げがあったときから20年が経過するまでは損害賠償請求権は消滅時効にかかりません(行使可能です)。

事故証明書を発行してもらう

事故証明書とは、交通事故が起こったことを証明するための書類のことです。事故証明書には以下のような項目が記載されており、事故の詳しい状況が把握できるようになっています。

 
  • 事故の発生日時
  • 事故の発生場所
  • 当事者(加害者・被害者)の氏名・住所・生年月日
  • 事故車両の車種・車両番号・自賠責保険関係
  • 事故時の状況
  • 証明書番号
  • 事故類型

事故証明書は、自賠責保険請求や任意保険の使用、損害賠償請求訴訟を起こす場合などに必要になります(訴訟提起にあたって必須ではありませんが、あった方が事故の日時と場所を特定するのが容易といえます)。

事故証明書は、自動車安全運転センターが作成・発行しており、同センターの窓口又はウェブサイト経由で申請するか、ゆうちょ銀行・郵便局で申請しましょう。

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当て逃げに気付かなかったときはどうする?

一目瞭然の被害ならすぐに気付くことができますが、見えにくい場所に傷が付いていた場合、気付かずに現場を離れてしまうことがあります。

当て逃げは現場で通報するのがベストですが、もし、後から気付いた場合はどうすればよいのか、その対処法についてご説明します。

気付いたタイミングで警察へ被害届を提出する

事故発生時から時間が経過すればするほど、証拠や目撃証言などが曖昧になり、犯人逮捕は難しくなります。

そのため、当て逃げ被害にすぐ気付かなかった場合でも、気付いたタイミングですぐに警察へ相談し、被害届を提出しましょう。

警察に被害届を出すときは、なるべく最近の行動を思い返して、心あたりのある現場の情報をまとめておくと手続がスムーズになります。

時間が経過していても、後述するドライブレコーダーなどの証拠をチェックすることで犯人逮捕につながる場合があります。諦めずに警察に通報することが大切です。

ドライブレコーダーなどを確認する

エンジンが動いていない間も録画し続けるタイプのドライブレコーダーを搭載している場合、過去の映像を確認すれば事故当時の状況を把握できる可能性があります。

ドライブレコーダーの映像は、一定時間が経過すると自動的に上書きされてしまうため、当て逃げ被害に気付いた段階で録画を停止し、データを確認してみましょう。

なお、ドライブレコーダーを搭載していなかった場合であっても、現場付近に設置されている防犯カメラの映像を警察が確認して、加害者の特定につながることもあります。

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まとめ

路上や駐車場などで当て逃げ被害にあったら、速やかに警察に被害届を提出し、証拠確保や保険会社への連絡などを行うことが大切です。

その場で当て逃げに気付かなかった場合でも、気付いたタイミングですぐに警察に通報し、被害届を出しておけば犯人確保の確率が高くなるでしょう。

犯人が見つかったら、当事者間で示談交渉が始まります。この際、相手方ともめる可能性もあるため、必要に応じて弁護士に相談すると、スムーズな解決を目指せるでしょう。

琥珀法律事務所は、交通事故補償問題の豊富な経験や実績を有しており、事案ごとの個別事情に応じた適切な解決策をご提案します。当て逃げ被害および示談交渉にお困りの方は、ぜひ、弊所にご相談ください。

この記事の監修者

弁護士:川浪 芳聖(かわなみ よしのり)

弁護士法人琥珀法律事務所 代表弁護士
所属:第一東京弁護士会

【経歴】

2008年弁護士登録
2010年主に労働事件を扱う法律事務所に入所
2011年刑事事件、労働事件について多数の実績をあげる
2012年琥珀法律事務所開設東村山市役所法律相談担当
2014年青梅市役所法律相談担当
2015年弁護士法人化 代表弁護士に就任
2022年賃貸不動産経営管理士試験 合格
2級FP技能検定 合格
宅地建物取引士試験 合格
2024年保育士試験 合格 (令和5年後期試験)
競売不動産取扱主任者試験 合格(2023年度試験)

【その他のWeb活動】