当て逃げされたら警察へ連絡すべき?正しい対応手順を紹介

当て逃げされたときの警察への報告義務

当て逃げは加害者が分からない場合が多いため、「どうせ犯人は見つからないだろう」と泣き寝入りしてしまう方もおられるのではないでしょうか。

しかし、当て逃げに気付いたタイミングですぐに警察に連絡し、証拠の確保などを行っていれば、犯人が見つかる確率は高くなるでしょう。

警察への連絡を怠ると、保険請求手続きに必要な書類も入手できなくなってしまいます。当て逃げ被害に遭ったら、必ず警察に連絡しましょう。

この記事では、当て逃げされたときの対応手順や、警察への届出義務の概要、犯人が見つかった場合の対応、加害者になってしまった場合の対処法についてご紹介します。

 
  • 当て逃げ事故では、加害者だけでなく被害者にも警察への報告義務が生じる
  • 車両の塗料や傷などから加害者が見つかることもあるため、証拠が乏しくても通報することが大切
  • 過失がない場合は任意保険会社に示談交渉を代行してもらえないため、弁護士に相談するのがおすすめ
 
琥珀法律事務所の代表弁護士 川浪芳聖の顔写真

この記事の監修者

弁護士:川浪 芳聖(かわなみ よしのり)

弁護士法人琥珀法律事務所 代表弁護士
所属:第一東京弁護士会

当て逃げされたときの対応手順

「路上で車に接触したのに加害者に逃げられた」、「駐車場に戻ったら愛車に傷が付いていた」などの当て逃げ被害に遭ったときは、警察への連絡や証拠の確保、保険会社への連絡などを行う必要があります。

こちらでは、当て逃げされたときの対応手順を5つのステップに分けてご説明します。

すぐに警察へ連絡する

当て逃げの被害に気付いたら、その段階で直ちに警察へ通報しましょう。当て逃げの場合、事故が発生してから時間が経つほど証拠が失われたり、目撃証言が曖昧になったり、損傷結果との因果関係の立証が難しくなったりしますので、速やかに通報することが大切です。

また、保険請求の際に必要な交通事故証明書は、警察に通報しないと作成・発行されません。保険金を受け取るためにも警察への連絡はしっかり行いましょう。

なお、その場で当て逃げに気付かなかった場合でも、諦めず、気付いた時点で通報することが大切です。

証拠を確保しておく

警察への通報を終えたら、当て逃げの証拠を確保しましょう。当て逃げを目撃している場合は、加害者の車種やナンバー、加害者自身の特徴などを思い出せる限りメモしておきます。

スマートフォンなどで写真を撮影している場合は、誤って削除してしまわないよう保存しておきましょう。

また、ご自分の車にドライブレコーダーを搭載している場合は、録画を停止し、データを確認します。録画を止めないと映像が上書きされてしまう可能性があるので注意しましょう。また、録画データの保存期間にも注意する必要があります。

他にも、現場周辺に防犯カメラが設置されている場合は、カメラの映像を確認するのも有効な方法です。駐車場や路上などに設置されている防犯カメラは個人が依頼しても内容を確認できないため、警察を介してチェックすることになるでしょう。

保険会社へ連絡する

ご自身が加入している任意保険会社に当て逃げ被害に遭ったことを伝えます。犯人が見つかった場合、当て逃げの損害は加害者または加害者が加入している任意保険会社が補償します。しかし、犯人が見つからず、かつ修理や買い替えを待てないという場合はご自身の保険の車両保険を利用するか、いったん自身で立て替えて修理費用等を支払うことになります。

当て逃げ被害の場合、加害者が見つかるまでに時間を要することも多いため、ご自身の任意保険会社にあらかじめ連絡しておいた方がよいでしょう。ただし、保険の内容によっては当て逃げは補償対象外になっていることもありますので、連絡の際に確認しておくことをおすすめします。

痛みがあれば、病院を受診する

車に乗っているときに当て逃げ被害にあった場合、事故直後から痛みが出ているときは当然として、事故直後に痛みを感じていなくても、数日後に痛みが出てきたら、病院を受診して、診断書を作成してもらいましょう。なお、このように、死傷の結果が生じた場合は、「当て逃げ」ではなく、「ひき逃げ」といい、区別されています。

特に、むち打ち症の場合、受傷してから数時間~1日を経て痛みやしびれなどの症状が出てくることがよくありますので、要注意です。

もし、ケガをした場合は、物損事故ではなく人身事故扱いになります。その場合、物の損害(車の修理費用等)だけでなく、治療費や慰謝料、休業損害、逸失利益などの賠償も請求できます(自賠責保険で一定程度補償されます)。また、加害者は、民事責任(賠償責任)に問われるだけでなく、行政処分や刑事処分を受ける対象になります。

弁護士に相談する

当て逃げの加害者が見つかった場合、相手方との間で示談交渉を行うことになります。示談交渉では、事故の過失割合に基づいて賠償額を決定することになりますが、加害者側から提示された過失割合や賠償額が、被害者にとって不利なものになっていることがあります。

過失割合や賠償額に不服がある場合、交渉して見直しを求めることは可能ですが、過失割合を巡って争いとなることも少なくありません。

また、示談交渉自体、一定の手間と時間がかかりますし、相手方との交渉にストレスを感じる方は少なくありません。交渉をスムーズに進めるためには、弁護士に相談することも検討しましょう。

弁護士に依頼すれば示談交渉を一任できますので、精神的な負担を軽減できるでしょう。

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当て逃げされたときの警察への報告義務

当て逃げ被害に遭ったものの、「加害者が分からない」、「証拠がない」、「被害が軽度だから警察に通報するのが面倒くさい」などの理由で、警察への届出をためらってしまう方は少なくありません。

確かに、警察への通報や被害届の提出には手間と時間がかかります。しかし、当て逃げに遭った被害者には警察に届け出る義務があることに注意が必要です。

こちらでは、当て逃げされたときの警察への報告義務や、後で気付いた場合の対処法などについてご説明します。

駐車場で当て逃げが起きた場合にも報告義務がある

道路交通法第72条では、交通事故があった場合は、警察官にその旨を報告しなければならないと定められています。 (参考:e-Gov法令検索『道路交通法』/https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_4-Se_2

公道での事故はもちろん、個人や法人が保有する駐車場であっても、不特定多数が出入りする場所であれば警察への報告義務が発生するので、たとえ軽微な当て逃げ事故であっても必ず警察に届け出ましょう。

なお、私有地内であり、かつ不特定多数が出入りしない場所で発生した事故であれば、道路交通法第72条に基づく報告義務はありません。しかし、負傷者がいる場合には、刑事責任に問われるおそれがありますので、警察に報告するべきです。

当て逃げに後で気付いた場合も届け出る

車から離れている間に当て逃げに遭った場合、被害に気付かずに現場から離れてしまうことはよくあると思います。

当て逃げ事故の通報は現場で行うのが基本ですが、後から被害に気付いた場合でも報告義務がなくなるわけではありません。そのため、「時間が経ってしまったから」などと簡単に諦めずに、気付いた段階で速やかに警察へ連絡しましょう。

被害に気付いた段階で通報すれば、加害者の発見につながる確率は高くなります。また、保険請求に必要な交通事故証明書は警察への通報が必須です。警察への通報を怠らないよう注意しましょう。

証拠がない場合でも警察へ連絡する

当て逃げでは、ドライブレコーダーの録画映像や目撃証言、周辺に設置された防犯カメラ映像などが証拠として役立ちますが、場合によってはこれらを確保できないこともあります。

そのようなとき、「証拠がないから警察に届け出ても意味がない」と落胆してしまいがちですが、警察が捜査を行えば、被害車両に付着した加害車両の塗料や、事故によって生じた加害車両の傷、周囲の防犯カメラの映像などを基に犯人を特定できる可能性があります。

ご自身で証拠を確保できない場合でも、自己判断せずに警察に通報し、捜査をしてもらいましょう。

報告後は警察で聞き取り調査を受ける

警察に通報した後、当て逃げの被害届を提出する際は、警察で聞き取り調査を受けることになります。

聞き取り調査では、事故時の状況や、事故現場の様子、加害者が見つかった場合どのような処罰を望むか、といった点について質問されます。

事故当時に現場にいなかった場合、事故発生時の詳しい状況は分からないと思いますが、いつ・どのように被害に気付いたかなどをなるべく詳細に伝えましょう。ドライブレコーダーの映像を確認していたら、その内容も説明します。

加害者への処罰感情について、厳正な処罰を望む場合はその旨をしっかり伝えましょう。供述を後から翻すことは簡単ではありませんので、回答は慎重に行う必要があります。

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当て逃げの犯人が見つかったらどうする?

提出した証拠や警察の捜査によって当て逃げの犯人が見つかった場合、その犯人(加害者)との間で示談交渉を行うことになります。示談交渉では双方の過失割合を基に賠償額を決めることになるので、交渉を行う際は慎重な対応が必要です。

こちらでは、当て逃げの犯人が見つかった後に被害者が行うことを説明します。

加害者側の保険の加入状況を確認する

加害者側が任意保険会社に加入しているかどうかを確認しましょう。任意保険会社に加入していた場合、その後の示談交渉は任意保険会社の担当者と行うことになります。

もし、任意保険会社に加入していなかった場合は、加害者が弁護士に依頼しない限り、加害者本人と直接示談交渉をすることになります。

一方、被害者側に少しでも過失がある場合は、加入している任意保険会社の担当者が示談交渉に臨むことになります。

もし、被害者側に非がない(事故当時、現場を離れていたor車を停止していたなど)場合は、加入している任意保険会社の示談代行を利用できませんので、被害者本人が加害者側との示談交渉にあたることになります。

示談交渉を進める

当て逃げ事故の損害賠償について加害者側と示談交渉を進めていきます。当て逃げ事故で加害者側に請求できる損害賠償の項目は次のようなものです。なお、事故によってケガをした場合(ひき逃げの場合)は、下記の1ないし4の損害のほかに、慰謝料等も請求できます。

 
  1. 損害を受けた物の修理費・買い替え費用
  2. 代車費用
  3. 車両の評価損
  4. 休車損害

1は、基本的に修理費の実費が損害賠償の対象となります。ただし、修理費用が被害車両の時価額よりも高い場合は、買い替え費用相当額(車両の時価額+買い替え諸費用)が上限となります。

2は、修理が終了するまで代車を利用した場合にかかった費用です。3は、当て逃げによって被害車両が事故車扱いになったことによって生じた評価額の減少分です。

4は、被害車両がタクシーなどの営業車だった場合、稼働できない間に生じた逸失利益を休車損害として請求できます。

過失割合を決める

当て逃げの損害賠償額は、事故の当事者の過失割合によって決定されます。

例えば、過失割合が加害者9:被害者1で、修理費に10万円かかった場合、被害者は10万円×9割=9万円を損害賠償請求できることになります。

事故当時、被害者が現場を離れていた場合など、被害者の車両が完全に停止していたときは、基本的に加害者側に100%非があるとみなされます(ただし、駐車禁止場所に車を駐車していた場合などは被害者側にも過失があると判断されやすいことに注意が必要です)。一方、被害車両が少しでも動いていた場合は、被害者側にも一定の過失があると判断されることが多いといえます。

加害者側は、賠償額を少しでも減らすべく、被害者側の過失割合を大きく提示してくることがあるので注意しましょう。過失割合や損害賠償額に不服がある場合は、安易に妥協せず、自身の認識や事故状況に基づいて、正当な過失割合を主張しましょう。

示談書を作成する

加害者・被害者の両方が示談に合意したら、その合意内容を示談書にまとめます。示談は法的には和解契約に該当しますので、法的な効力を有します。

そのため、示談書を作成したら内容に誤りがないかどうかをしっかり確認することが大切です。なお、示談書には以下のような項目を記載するのが一般的です。

 
  • 事故発生日時
  • 事故発生場所
  • 事故の内容
  • 事故車両の所有者名、運転者名
  • 車両のナンバー
  • 示談の内容
  • 賠償金の額や支払い方法

示談書は一般的に加害者側が作成し、被害者側に提示します。示談書を受け取った被害者は、内容を確認後、示談書に署名捺印して相手方に返送することになります。示談は、加害者及び被害者の双方が合意したときに成立します。口頭でも合意は成立しますが、示談書(免責証書)を取り交わすのが一般的です。

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当て逃げした場合でも警察への連絡が必要!対処方法を紹介

事故当時、相手方車両に接触したことに気付かずに現場を離れてしまい、後から気付いた場合でも、道交法第72条に基づいて、警察へ報告しなければなりません。 (参考:e-Gov法令検索『道路交通法』/https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_4-Se_2

現場から逃走すると当て逃げとなり、罰則が重くなりかねないので、気付いた時点で速やかに連絡することが大切です。

こちらでは、当て逃げしてしまった場合の具体的な対処方法について説明します。

警察へ連絡する

当て逃げ事故を起こしたことに気付いたら、その時点ですぐに警察へ連絡し、事故を起こした旨を伝えましょう。

後から気付いた場合、いつ・どこで・どのような事故を起こしてしまったのかという点について、記憶の曖昧なところがあるかもしれません。しかし、思い出せる範囲内で警察に事情を説明します。

なお、被害者側が当て逃げされたことに気付いた場合、加害者が連絡する前に警察へ通報しているケースもあります。被害届を提出される前に警察へ出頭すれば、「事故に気付かなかった」という主張は認められやすくなると思います。そのため、事故に気付いたら速やかに連絡することが大切です。

保険会社へ連絡する

任意保険に加入している場合は、保険会社に連絡し、当て逃げ事故を起こしてしまったことを伝えます。

連絡する際は、いつ・どこで・どのような事故を起こしてしまったのか、事故の状況や情報をなるべく詳しく説明しましょう。また、警察に既に連絡したことも話しておきます。

なお、現場から離れた後に通報した場合、保険会社に連絡した時点では被害者の情報を把握していないケースがほとんどです。その場合、後日警察から事故について連絡が入ったときに被害者の情報を教えてもらい、改めて保険会社に連絡する必要があります。

被害者と示談交渉を進める

被害者に当て逃げしてしまったことを謝罪した上で、損害賠償額や過失割合についての示談交渉を進めます。

被害者が事故当時、車両に乗っていなかった場合は、100%加害者側に非(過失)があると判断されることが多いので(被害者が駐車禁止場所に駐車していた場合等を除く)、過失割合についてもめることは少ないといえます。

一方、事故発生時に被害車両も動いていた場合は、被害者側にも多少の非(過失)があると判断されることが多いといえます。この場合、過失割合について話し合い、事故状況を踏まえて決定することになります。

過失割合は、加害者側が先に提示するのが一般的ですが、加害者側から提示された過失割合に被害者側が納得せず、紛争に発展する可能性があります。このような場合には、当事者同士で話し合いを続けることが難しくなりますので、弁護士への依頼も検討した方がよいでしょう。

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まとめ

当て逃げ事故が発生したら、加害者であっても被害者であっても、警察への報告義務が生じます。

被害者の場合は、警察に連絡した後、なるべく証拠の確保に努めるとともに、保険会社への連絡や、病院への受診、弁護士への相談などを行いましょう。

加害者が見つかった後は示談交渉が始まりますが、場合によっては過失割合などでもめることもあります。スムーズな事故解決を目指すのなら弁護士に相談するのがおすすめです。

琥珀法律事務所は、当て逃げ事故に関する補償問題や示談交渉について豊富な実績を有しております。事故の状況などを基に、依頼者様にとってベストな解決策の模索・提案を目指しております。当て逃げ事故の手続きや交渉にお困りの方は、ぜひ、弊所へお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

弁護士:川浪 芳聖(かわなみ よしのり)

弁護士法人琥珀法律事務所 代表弁護士
所属:第一東京弁護士会

【経歴】

2008年弁護士登録
2010年主に労働事件を扱う法律事務所に入所
2011年刑事事件、労働事件について多数の実績をあげる
2012年琥珀法律事務所開設東村山市役所法律相談担当
2014年青梅市役所法律相談担当
2015年弁護士法人化 代表弁護士に就任
2022年賃貸不動産経営管理士試験 合格
2級FP技能検定 合格
宅地建物取引士試験 合格
2024年保育士試験 合格 (令和5年後期試験)
競売不動産取扱主任者試験 合格(2023年度試験)

【その他のWeb活動】