民事事件と刑事事件との違い

民事事件と刑事事件との違い

はじめに

皆さんは日常的に「『民事』で訴えられるかも」「『刑事』事件化される見通し」などの言葉を聞いたことがありませんか。
法律上、民事と刑事というものにはどのような違いがあるのでしょうか。

このコラムでは、主に裁判の観点から民事事件と刑事事件の違いを説明したいと思います。

民事事件と刑事事件

民事事件

あなたが友人に自転車を貸したとします。友人には1週間だけ貸す約束で貸したのに、その友人は半年経っても返してくれません。
このような場合、あなたは法律上、貸した自転車を返すよう友人に請求することができます。

また、あなたが調べたところによると、貸した自転車が友人によって壊されていた場合、あなたは損害賠償請求として友人に対し修理費の支払いを求めることができます。
これに対し、友人が「自転車を返すつもりはない」「修理費も払わない」と述べてあなたに抵抗した場合、あなたと友人との間で紛争が生じることになります。

このように、通常、当事者間で財産上の請求をしたりされたりするものを民事事件と呼んでいます。

刑事事件

今度は、あなたの家に置いてあった自転車が、何者かによって盗まれたとしましょう。そして、数日後、その犯人が誰か発覚したとします。
この犯人を国の機関が窃盗罪で逮捕したり処罰したりするのが、刑事事件です。

この場合、あなたは告訴をして、国の機関に犯人を捜査してもらうことはできますが、自分で犯人を処罰することはできません。
ここでの当事者は、「国の機関(警察官、検察官等)」と「犯人(法律上、裁判になる前は被疑者、裁判となってからは被告人と呼ばれます)」になり、被害者は刑事事件の当事者ではないからです。

民事裁判と刑事裁判

総論

民事裁判も刑事裁判も、紛争を裁判で解決することは共通していますので、いずれも裁判官が判決という形で紛争を解決することになります。
しかし、両者にはいくつか違いがあります。その違いを見ていきましょう。

当事者

民事事件の当事者は、原則として国の機関以外の者(これを法律上、私人といいます)になります。そのため、民事裁判の当事者はどちらも私人ということになり、訴えた方を「原告」、訴えられた方を「被告」と呼びます。
刑事事件の当事者は、先ほど述べましたとおり、国の機関と犯人です。そのため、刑事裁判の当事者も国の機関と犯人ということになります。

ただ、民事裁判と異なり、訴えるのは必ず国の機関である検察官となり、犯人は訴えられる立場の「被告人」となります。

なお、新聞報道などでは、刑事裁判の被告人のことを「被告」などと呼んだりしますが、「被告人」が法律上正確な呼び名となります。

判決の結果

民事裁判も刑事裁判も、裁判官が審理した結果、判決を出して紛争を解決する点は共通しています。しかし、その判決を実現する手続には、違いがあります。

原告が被告に金銭の支払いを求める民事裁判の場合、原告勝訴の判決を実現する手続は、民事執行手続となります。民事執行手続の詳しい説明は長くなるので別の機会に譲りますが、簡単に言いますと、被告の財産を国が強制的に処分したり差し押さえたりして、原告への金銭の支払いに充てるようなものをいいます。

刑事裁判の場合、被告人に対して実刑の有罪判決が出た場合(これは国側の言い分が通ったという意味で検察官勝訴判決ともいえるかも知れません)、被告人を処罰する手続が刑の執行の手続になります。これは、例えば「懲役〇年」という判決に従って、国の機関が○年の間、被告人を強制的に刑務所等に収容して、労役を科すというものです。

終わりに 

裁判手続を民事裁判と刑事裁判に分けるのは、かなり大きな括りでの分け方になります。

実際の裁判では、民事裁判であれば「家事」「労働」「商事」等々さらに細かい区分があります。刑事裁判であれば、刑法が適用される裁判だけでなく、刑事特別法が適用されるものなど多岐にわたります。

当事務所では、民事・刑事ともに、様々な種類の裁判を広く扱ってきた実績があります。どちらの裁判にあなたが巻き込まれた場合でも、弁護士法人琥珀法律事務所に是非一度ご相談下さい。