遺産分割 って何?

遺産分割 って何?

人が亡くなると、その人(「被相続人)といいます。)の有していた財産は遺産として相続の対象となりますが、その遺産を承継する人(「相続人」といいます。)は一人だけとは限りません。相続人には被相続人の配偶者や子など、複数の人がなり得るためであり、相続人が複数になる相続を「共同相続」といいます。
また、遺産の内訳も、現金、預金、不動産、有価証券(株券等)、ゴルフ会員権などなど・・・様々な財産が相続の対象となります。

遺産分割 とは、共同相続において、誰がどの財産をどれだけ承継するのか、遺産の分配について具体的に決定する手続のことです。

なぜ 遺産分割 が必要なのか

本稿では、次の事例を用いて考えてみましょう。
「亡くなったAの相続人は、妻B、長男C、次男Dの3人である。Aの遺産は、現金3000万円と自宅土地建物(時価5000万円)である。なお、C及びDは既に実家を出て独立しており、遠方に居住している。」

この場合の法定相続分は、配偶者が2分の1、子2人がそれぞれ4分の1となります。そうすると、Bは現金1500万円と自宅土地建物について持分2分の1を、C及びDは現金750万円と自宅土地建物について持分各4分の1をそれぞれ承継することになりそうです。
※各人の相続分は法定相続分のみにより決定されるわけではなく、「寄与分」や「特別受益」という事項を考慮して具体的相続分を確定させる必要がありますが、ここでは考慮の対象外とします。

しかし、自宅土地建物を共有状態のままにしておくことは望ましい状態とは言えません。仮にBが自宅土地建物を売却したいと考えても、共有物の売却には共有者全員の同意が必要であるため、C及びDの同意を得なければなりません。また、CやDが亡くなり、さらに相続が発生した場合等、権利関係が複雑になり、将来的なトラブルの原因にもなります。

このように、遺産を共同相続人間の共有下におくことは、当事者にとって不便であるのみならず、しばしば相続人間の紛争の原因となってしまいます。

このような問題を予防・解決するため、共同相続における遺産の共有関係を解消し、個々の財産を各相続人の単独所有に還元する手続が遺産分割なのです。

遺産分割 の方法

一般的に、遺産分割 は、①現物分割、②換価分割、③代償分割の3種類の方法が採られます。

現物分割

現物をそのまま共同相続人間に配分する分割方法のことです。
設例の場合、自宅建物をBに、自宅土地をCに、現金をDにそれぞれ分配する場合が現物分割にあたります。遺産はなるべくそのままの状態で相続人が承継することが望ましいため、遺産分割の原則的な手法として現物分割が多く用いられます。
もっとも、上記のようにAの遺産を分割すると、BCDそれぞれが承継する財産の間に価値の不均衡が生じるおそれがあるほか、土地と建物がそれぞれ別人の所有に帰することは新たな紛争の原因となりかねず、必ずしも適切な分割の方法とはいえないでしょう。
そこで、補充的な手法として以下の換価分割や代償分割が用いられます。

換価分割

遺産中の個々の財産を売却し、その代金を配分する分割方法のことです。
設例の場合、自宅土地建物を売却して得た代金5000万円を、BCDそれぞれに分配することになります。相続開始時に存在した現金3000万円と併せて8000万円を分割することになりますので、Bは4000万円、CDはそれぞれ2000万円ずつ取得することになります。
財産を全て換価して現金にしてしまえば分割は容易ですし、相続人間に不平等が生じることもありません。その意味では換価分割は優れた分割方法ということができます。しかしながら、現実には不動産を売却するための時間や手間がかかりますし、共同相続人の中には遺産を売却すること自体を拒む人もいるでしょう。設例のケースですと、Bは夫Aと長年共に暮らした自宅を手放すことを忍びないと考えるかもしれません。

代償分割

現物を特定の相続人が取得し、取得者が他の相続人に対してその相続分に応じた金銭を支払う分割方法のことです。
設例の場合、自宅土地建物についてはBの単独所有とし、現金3000万円はCとDが1500万円ずつ取得することとします。Bの相続分は遺産総額8000万円に対してその2分の1ですから、時価5000万円の自宅土地建物を単独所有とすると自己の相続分を超えた価値を取得することになってしまいます。その代償として、BはC及びDに対して各500万円ずつ支払うのです。

まとめ

今回用いた設例は相当に単純化された事例ですが、実際の手続では、相続人となる者は誰か、遺産の範囲はどこまでか、個別の遺産をどう評価するか等の事項について順を追って確定させていく必要があります。相続人同士の話合いで全て解決できればベストですが、共同相続人はそもそも互いの利害が対立する関係にあるため、当事者同士の話合いで解決することは必ずしも容易ではありません。そのため、法は、遺産分割協議がまとまらない場合には、遺産分割調停や遺産分割審判といった家庭裁判所を利用しての遺産分割という手段を用意しています。

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