はじめに
平成28年、長野県議会において「子どもを性被害から守るための条例案」が可決されました。同県は、全国で唯一、18歳未満との性的行為を罰則付きで禁じる条例のなかった県でしたが、同条例案が可決されたことによって、全国的に児童買春が条例により罰則付きで禁止されることになりました。
児童買春と共に近年問題視されてきたのが、児童ポルノ規制です。平成24年、児童ポルノの単純所持が禁止されたことは、ご存知の方も多いと思います。
このコラムでは、児童買春や児童ポルノに対するどのような規律があるのかをご紹介した後、当事務所ではこれらの問題にどのように対処することができるのか、ご説明いたします。
児童買春の規律
法律
平成11年に制定された「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(以下、「児童ポルノ禁止法」といいます。)第4条によりますと、
「児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。」
とされています。
また、続く第5条及び第6条において、児童買春のあっせん行為等が処罰の対象とされています。
同法では、「児童買春」の定義を次のように定めています。
「この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者」(児童ポルノ禁止法第2条2項)
条例
冒頭で長野県の例を取り上げましたが、これまで日本の各地方自治体は、それぞれ個別に青少年に対するいわゆる「淫行」等を取り締まってきました。そのため、自治体によって取り締まりの対象になる行為や取り締まりの程度が異なるなど、対応にばらつきがありました。
また、取り締まりの対象となる淫行の意味が不明確であるため、これまで裁判で争われ、最高裁判所において定義の確認が行われたこともありました。
このようないわゆる淫行条例に比べて、児童ポルノ禁止法の方が、国民にとってどのような行為が取り締まられるか予測しやすい規制になっているといえるでしょう。
児童ポルノの規制
児童ポルノの意義
児童ポルノ禁止法は、「児童ポルノ」を次のように定義しています。
「この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」
自画撮り行為について
近年、SNS等で知り合った未成年者に対し、成年者が裸身や局部の自画撮り行為を促し、その画像や動画を自己に送信させる行為が問題となっています。
このような行為は、例え販売等の営利目的ではなく、自己の性的欲求を満たすためであっても、児童ポルノ禁止法上、児童ポルノ単純製造罪(同法7条4項)に該当するおそれがあります。そして、同罪に問われると、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられることになります。
最近では、東京都が児童ポルノ単純製造罪を問いにくいケース(自己に性的な画像を送信するように悪質な勧誘を行わないケース)でも、何らかの取り締まりができないか検討していることが報じられておりますので、東京都で当該内容の条例ができますと、他の地方自治体にも波及していくことが考えられます。
終わりに
児童買春も児童ポルノ関連の犯罪も、対象となった未成年者の成長に重大な害悪を及ぼす極めて深刻なものであることは間違いありません。
ご自身がこれらの犯罪に巻き込まれてしまった際には、是非、弁護士法人琥珀法律事務所にご相談下さい。全力でサポートいたします。
また、軽い気持ちでこれらの犯罪に関与してしまった方々に対しても、自己の行ってしまったことに十分に向き合っていただいたうえで、刑事手続上のサポートをさせていただきます。