右直事故の過失割合や修正要素について事例ごとに解説

右直事故の過失割合や修正要素について事例ごとに解説

右直事故は、交差点で多発する交通事故の一つです。しかし、自動車同士の事故か、自動車対バイクの事故かによって、過失割合が異なることをご存じない方は多いのではないでしょうか。

交差点では原則として直進車が優先ですので、右直事故の過失割合は直進車よりも右折車が大きくなります。ただし、場合によっては直進車の過失割合が右折車よりも大きくなることもあります。

具体的には、事故の状況によって過失割合は変わりますし、自動車同士の事故か、自動車対バイクの事故かによっても過失割合に差が出ますので、状況ごとの違いをチェックしておきましょう。

この記事では右直事故の基礎知識や、ケース別の過失割合、修正が加えられるケース、加害者に請求できる損害についてご紹介します。

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この記事の監修者

弁護士:川浪 芳聖(かわなみ よしのり)

弁護士法人琥珀法律事務所 代表弁護士
所属:第一東京弁護士会

右直事故とは?

右直事故とは、交差点などで直進車と右折車が衝突する交通事故のことです。

車同士の交通事故で、どちらの車も動いていた場合は原則として双方に過失があると判断されますが、道路交通法第37条では、右折車は直進車または左折車の進行を妨害してはならないと定められていますので、一般的に右折車の方が直進車よりも過失割合が大きいと判断されます。

参考:『e-Gov法令検索 道路交通法』
URL:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105_20240401_505AC0000000063

ただ、事故の発生場所や事故発生時の状況によって過失割合は変化しますので、注意が必要です。

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【自動車同士のケース】右直事故の過失割合

右直事故の過失割合や修正要素について事例ごとに解説

右折車、直進車のどちらも自動車だった場合に発生した右直事故の過失割合は、事故の発生場所や状況によって異なります。同じ交差点でも信号機の有無や当時の信号の状態によって過失割合は変化しますので、注意しましょう。

ここでは自動車同士で起こった右直事故の過失割合を4つのケース別に解説します。

信号機のある交差点における事故

信号機のある交差点で発生した右直事故の、信号別の過失割合をまとめました。なお、青→赤などの表現は、青信号で交差点に進入し、赤信号で右折したという意味です。

信号の色過失割合(%)
直進車右折車
直進車・右折車ともに青2080
直進車が黄色、右折車は青→黄色7030
直進車・右折車ともに黄色4060
直進車・右折車ともに赤5050
直進車が赤、右折車が青→赤9010
直進車が赤、右折車が黄→赤7030
直進車が赤、右折車が右折の青矢印1000

 

両者に明確な違反(信号無視)がない場合は、基本的に右折車の過失割合が大きくなります。しかし、直進車に全面的あるいは一部非がある場合は直進車の過失割合が大きくなることもあります。

信号機のない交差点における事故

信号機がない交差点で右直事故が発生した場合、どちらの車両が優先だったかによって過失割合が決まります。どちらの車両が優先かは、両車両が走っていた道路の幅や一時停止の規制の有無などによって異なります。

道路の幅が同じだった場合の過失割合は次のとおりです。

事故発生時の状況過失割合(%)
直進車右折車
直進車の対向から右折して衝突20 80
直進車から見て左方向から進入し、右折4060
直進車から見て右方向から進入し、右折3070

道路幅が異なる場合は次の表のとおりです。

事故発生時の状況過失割合(%)
直進車右折車
右折車が狭い道→広い道2080
右折車が広い道→狭い道直進車から見て左方向から右折6040
直進車から見て右方向から右折5050

また、どちらか一方の道路に一時停止の規制があった場合は以下のとおりです。

事故発生時の状況過失割合(%)
直進車右折車
右折車の方に規制あり1585
直進車の方に規制あり直進車から見て左方向から右折7030
直進車から見て右方向から右折6040

どちらか一方の道路が優先道路だった場合は次の表のとおりです。

事故発生時の状況過失割合(%)
直進車右折車
右折車が非優先→優先1090
右折車が優先→非優先直進車から見て左方向から右折8020
直進車から見て右方向から右折7030

丁字路交差点における事故

丁字路交差点における右直事故の過失割合は以下の表のとおりです。

事故発生時の状況過失割合(%)
直進車右折車
交差する道路の幅が同程度3070
直進車側が広い2080
右折車側に一時停止規制あり1580
直進車側が優先道路1090

 

丁字路交差点の右直事故では、どちら側の道路が優先だったかによって過失割合が異なりますが、右折車側が大きくなるケースが一般的です。

特に直進車側が優先道路だった場合、原則として右折車は直進車を優先させなければなりませんので、右折車の非が大きくなります。

交差点以外における事故

右直事故の大半は交差点で発生しますが、なかには道路外から道路に入ろうとして直進車と衝突するなど、交差点以外の場所で発生するケースもあります。

なお、その場合の過失割合は次のとおりです。

事故発生時の状況過失割合(%)
直進車右折車
道路に進入しようとして右折2080
道路の外に出ようとして右折1090

丁字路交差点と同じく、交叉点以外の場所での右直事故も基本的に右折車の過失割合が大きくなります。

ただし、直進車に速度違反などがあった場合は過失割合が変化します。

修正が加えられるケースについて、詳しくは後述します。

【自動車とバイクのケース】右直事故の過失割合

自動車とバイク間で発生した右直事故の過失割合は、自動車同士のケースに比べて、バイクの方が少なくなります。

ここでは自動車とバイクが右直事故を起こした場合の過失割合をまとめました。

信号機のある交差点における事故

信号機のある交差点でのバイクと自動車の右直事故の過失割合は以下のようになります。 


事故発生時の状況
過失割合(%)
バイク直進・自動車右折自動車直進・バイク右折の場合
バイクバイク
直進車・右折車ともに青15857030
直進車が黄色、右折車は青→黄色60402575
直進車・右折車ともに黄色30705050
直進車・右折車ともに赤40604060
直進車が赤、右折車が青→赤80201090
直進車が赤、右折車が黄→赤60402080
直進車が赤、右折車が右折の青矢印10000100

信号機のない交差点における事故

信号機のない交差点でバイクと自動車が右直事故を起こした場合の過失割合は次の表のとおりです。


事故発生時の状況
過失割合(%)
バイク直進・自動車右折自動車直進・バイク右折の場合
バイクバイク
道路幅が同じ15857030

交差点以外における事故

交叉点以外で車とバイクが右直事故を起こした場合の過失割合は以下の表のとおりです。

事故発生時の状況過失割合(%)
バイク
車が道路外から右折して進入1090
車が道路外へ右折して出る1090
バイクが道路に右折して進入7030

こうした事故は、駐車場やガソリンスタンドなどで起こりやすい傾向にあります。

基本的に、右折したのが車側だった場合は車90:バイク10です。

一方、バイクが道路に進入するために右折した場合は、車30:バイク70と、逆パターンに比べてバイク側の過失割合は少なくなります。

右直事故の過失割合が修正されるケース

ここまで右直事故の基本的な過失割合を紹介しましたが、事故当時の状況によっては修正が加えられることもあります。

ここでは右直事故の過失割合が修正されるケースを4つのポイントに分けて説明します。

速度超過・減速不足

道路交通法第22条1項は、「車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない」と定めています。また、道路交通法第34条2項は、車両は右折する際に徐行しなければならないと定めています。

そのため、直進車が交差点に入る際にスピードを出しすぎた、あるいは右折車が十分に減速せず、徐行しなかった結果、事故が起こってしまった場合は、速度違反・徐行義務違反の車両の過失割合は大きくなります。

なお、過失割合に影響する速度違反は、時速15キロ以上の違反です。

参考:『道路交通法』
URL:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105_20240401_505AC0000000063

早回り右折・直近右折

早回り右折とは、交差点の中心よりも手前で右折する行為です。

道路交通法第34条2項では、車両は右折する際、あらかじめできる限り道路の中央に寄り、かつ交差点の中心付近の内側あるいは道路標識等で指定された部分を徐行することが義務づけられています。そのため、早回り右折は道交法違反となり、右折車の過失割合に+5%の修正が加えられます。

一方の直近右折とは、直進車の至近距離で右折する行為です。具体的には、直進車が通常速度で停止線を越え、交差点に入る直前まで来ているタイミングで右折した場合は直近右折とみなされます。

非常に危険な行為ですので、直近右折した場合は右折車の過失割合に+10%の修正が加えられます。

参考:『道路交通法』
URL:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105_20240401_505AC0000000063

右折の合図なし

道路交通法第53条では、車の運転手は右左折や転回などで進路を変える場合、手や方向指示器(ウインカー)などで合図をすることを義務づけています。合図をしないと、その車がどのような動きをするのか判断できず、事故発生の可能性が高くなるからです。

そのため、右折する車がウインカーで合図を出さずに右折した場合、右折車の過失割合に+10%の修正が加えられます。

なお、道路交通法施行令第21条は、右折する際は交差点の30メートル手前から合図を出すよう定めています。ウインカーを出すタイミングが遅すぎた場合、合図なしとみなされて修正の対象になる可能性がありますので、要注意です。

参考:『道路交通法』
URL:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105_20240401_505AC0000000063

参考:『道路交通法施行令』
URL:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335CO0000000270_20240401_506CO0000000043

直進車の重過失

右直事故では基本的に直進車側の過失割合が低くなりますが、直進車に重過失がある場合は大幅な修正が加えられることになります。具体的には、居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転だったなどのケースです。

これらのケースに該当した場合、直進車側に+20%の過失が加算されますので、場合によっては右折車との過失割合の比が逆転する可能性もあります。

なお、右折車側に重過失が認められた場合も同様の修正が行われますが、その場合の加算は+10%となります。

右直事故が発生した際に請求できるもの

右直事故が発生した場合、相手方に対して、過失割合に応じた金額の損害賠償を請求することができます。請求できる項目は大きく分けて3つあり、それぞれ内容や請求額の算出基準が異なります。

特に基準は請求額を大幅に左右する要因ですので、注意しましょう。ここでは右直事故で相手方に請求できる項目について解説します。

慰謝料

事故で負った精神的苦痛に対して請求する金額です。慰謝料には複数の種類があり、怪我の治療で入通院した場合に請求できる入通院慰謝料、後遺障害を負った場合に請求できる後遺障害慰謝料、事故で死亡した人の遺族が請求できる死亡慰謝料があります。

なお、慰謝料の請求額となる基準には、自賠責保険で用いる自賠責基準、任意保険会社が独自に定める任意保険基準、裁判所の判例を基準にした弁護士基準の3つがあります。

これら3つの基準のうち、最も請求額が大きくなるのは弁護士基準なので、慰謝料をしっかり請求したい場合は弁護士への依頼を検討しましょう。

消極損害

消極損害とは、事故に遭わなかったら将来的に得るはずだった利益の喪失分のことです。

例えば、後遺障害や死亡によって働けなくなった被害者が本来得るはずだった収入(逸失利益)や、事故によって営業車が大破し、事業を行えずに被った損害(休業損害)などがこれに該当します。消極損害の金額は、これまで得た収入や休業日数などを基に算出されます。

なお、休業損害については被害者が専業主婦(夫)でも請求することが可能です。また、死亡逸失利益に関しては、死亡した人の遺族が請求することになります。

積極損害

積極損害とは、事故に遭わなかったら発生しなかったであろう費用のことです。例えば、事故で破損した車の修理費、事故で負った怪我の治療費、通院するための交通費、怪我人を介護するための費用などがこれに該当します。

また、保険金の請求などに必要な診断書作成料も積極損害に含まれる費用です。他にも、治療に必要と医師が認めた場合は、鍼灸やマッサージ費用、温泉治療費なども請求することができます。

なお、これらは実際に負担した金額に関する請求ですので、前述した入通院慰謝料などとは別扱いとなります、したがって、両方合わせて請求することが可能です。

まとめ

右直事故の過失割合は、自動車同士のケースと、車対バイクのケースとで異なります。一般的には右折する側の非が大きくなりますが、その割合は信号の状態や道路の状況によってさまざまです。

また、いずれかのドライバーにスピード超過や早回り右折、合図なしなどの違反があれば修正が加えられることもあります。特に直進車の場合、居眠り運転や酒酔い運転、無免許運転などの重過失があると大幅な加算となるので注意しましょう。

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この記事の監修者

弁護士:川浪 芳聖(かわなみ よしのり)

弁護士法人琥珀法律事務所 代表弁護士
所属:第一東京弁護士会

【経歴】

2008年弁護士登録
2010年主に労働事件を扱う法律事務所に入所
2011年刑事事件、労働事件について多数の実績をあげる
2012年琥珀法律事務所開設東村山市役所法律相談担当
2014年青梅市役所法律相談担当
2015年弁護士法人化 代表弁護士に就任
2022年賃貸不動産経営管理士試験 合格
2級FP技能検定 合格
宅地建物取引士試験 合格
2024年保育士試験 合格 (令和5年後期試験)
競売不動産取扱主任者試験 合格(2023年度試験)

【その他のWeb活動】