両親が離婚したときによく耳にする「養育費」という言葉。
具体的に、どのような仕組みなのか細かくまとめてありますので、今現在養育費に関して話し合いをしている方など、参考になさってみてください。
養育費ってなに?
非監護親(子供と離れて住む親)から、監護親(子供を監督、保護する親)に対して支払われる未成熟子(身体的・精神的・経済的に成熟化の過程にあるため未だ就労できず扶養を受ける必要がある子)の養育に要する費用で、生活に必要な経費、教育費、医療費などです。
養育費の分担義務については、親権者であるか否か、子と共同生活をしているか否かといった事情によって責任が変わることはなく父母の責任は同質であるとされています。
未成熟の子供に対する養育費の支払義務(扶養義務)は、親の生活に余力がなくても自分と同じ生活を保障するという強い義務(生活保持義務)だとされています。 自己破産した場合でも、子の養育費の負担義務はなくなりません。
平成23年の民法改正により、民法766条1項の離婚の際に夫婦が取り決める事項として面会交流及び養育費の分担が明文化されました。
養育費の請求手続
話合いで双方が納得した結論に至るのがベストですが、養育費について話合いがまとまらない場合や話合いが出来ない場合は、子を監護している親から他方の親に対して、家庭裁判所に調停又は審判の申立をして、養育費の支払いを求めることが出来ます。
調停手続では、調停委員の立会いのもと、養育費がどのくらいかかっているのか、申立人及び相手方の収入がどのくらいあるか等の事実関係を当事者が主張し(必要に応じて資料を提出します。)、合意を目指した話合いが進められます。話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され、裁判官が一切の事情を考慮して、審判をすることになります。
養育費は離婚時に決めていなくても、子の必要や親の支払能力に応じ、いつでも請求することが出来ます。離婚時に早く離婚をするために、父母間で養育費は一切いらないといった合意をすることがままありますが、養育費を請求することはあくまでも子の権利ですのでこのような合意は無効です。
したがって、「養育費はいらない」との合意をして離婚し、その後事情が変わって養育費を請求しなければならなくなったような場合であっても、養育費を請求することが出来ます。そして話合いで合意に至ることが難しければ家庭裁判所の調停、審判を利用することが出来ます。
養育費の支払の開始時期は、審判の場合裁判所の裁量にゆだねられますが、調停又は審判の申立時を始期とするものが多いです。
養育費支払の終了時は、養育費は未成熟子(身体的・精神的・経済的に成熟化の過程にあるため未だ就労できず扶養を受ける必要がある子)について認められるものですが、実務は20歳未満の子を一応未成熟子と扱っています。
20歳未満であっても、就職しており、自活できる収入を得ている場合、扶養義務は終了し養育費をもらうことが出来ません。ただし、働いているといっても不定期・低額のアルバイト収入に過ぎない場合は、直ちに子が成熟しているとまではいえません。
養育費と面会交流の関係
養育費と面会交流は、いずれも子供の成長にとって重要な権利であり両者は対価関係にはありません。したがって例えばDVのため非監護者である父と子の面会を認めるべきではない場合であっても養育費を支払う義務は発生します。
他方、非監護親が病気等のやむを得ない事情により養育費を支払う義務を免れる場合であっても面会交流を認めるべき場合もあります。
養育費と面会交流とは対価関係にはないので、当事者が希望しても、「養育費の支払いにつき不履行が生じたときは面会交流を認めない」、「面会交流が実施されない月は養育費支払義務は免除される」などの文言を合意書に入れることはできません。
養育費の算定
父母が話し合って双方が納得する額を決められるのが一番ですが、現実には話合いで養育費の額を決めるのは困難なことが多いでしょう。
裁判官等から構成される「東京・大阪養育費等研究会」が「簡易迅速な養育費の算定を目指して」(判例タイムズ平成15年4月1日第1111号掲載)という研究結果を発表しました。
家庭裁判所の実務ではこの研究結果として提示された「養育費の算定表」の使用が定着化しています。なお、子が4人以上いたり、養育費の支払義務者も子を監護している場合等は算定表を用いることが出来ません。このような場合には、家庭裁判所において従前から使われていた標準的算定方式にしたがって算定されることになります。
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