裁判所には、最高裁判所をはじめいくつかの種類があります。
日本国憲法では、その第76条において「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と規定されており、さらに、裁判所法によって、全国に一つの最高裁判所と、複数の種類の下級裁判所が設置されています(高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所)。
このように日本には、大きく分けて5種類の裁判所が存在しています。
ここでは、各裁判所の特色についてお話していきます。
最高裁判所
最高裁判所は、全国でひとつだけ東京に置かれているもので、文字通り、裁判所の最上位に位置づけられている機関です。
簡単なイメージとしては、最初に地方裁判所で判決が出たとすると、それに不服がある場合には高等裁判所に控訴し、さらに高等裁判所の判決に不服がある場合には最高裁判所に上告というものをします。これらの各段階は「審級」といいますが、最高裁判所は最後の審級を担当するため、終審裁判所とも呼ばれます。このような裁判に関する権力作用のことを司法権といいますが、司法権を司るのが、最高裁判所を頂点とする裁判所ということになります。
ここで、最高裁判所の裁判官の構成についてみてみます。
裁判官は計15名とされており、1人の最高裁判所長官と14人の最高裁判所判事で構成されています。
この15人の裁判官には、裁判官及び検察官出身者のほかに弁護士や大学教授などが選任されており、大きな偏りのないように、それぞれ一定の割合で構成されています。そしてこれらの裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民審査に付されることになっています(日本国憲法第79条第2項)。
審理の方法には、15名全員で行われる大法廷と呼ばれる場合と5名で構成される小法廷と呼ばれる2つの場合があります(小法廷は第一から第三まであります)。
では、大法廷で審理されるのはどのようなケースなのでしょうか。
裁判所法10条には大法廷で裁判しなければならない場合が規定されていますが、これを簡潔にいうと、法令が憲法に違反している・過去の最高裁の判例に反しているなどといった可能性のある事件がこれに該当します。
具体例を挙げますと、最近では、国籍法3条1項の規定が憲法14条に反するとされた事例があります。このような憲法違反の判決がでますと、原則として行政府及び国会はその判断に従って法改正などを行うため、世間に広く影響をもたらすことになります。そのため、大法廷が扱う事件というのは、一般的には、世間の耳目を集めるような重大な事件であることが多いです。
以上のように最高裁判所は、行政府をはじめとする国家権力の均衡抑制のため、非常に重要な役割を担っている機関と言えます。
高等裁判所
高等裁判所は、東京都、大阪市、名古屋市、広島市、福岡市、仙台市、札幌市、高松市の全国8箇所に設置されています。また、必要に応じて支部も置かれており(名古屋高等裁判所金沢支部など6箇所)、最近では、平成17年4月から、知的財産に関する事件を専門的に取り扱う裁判所として、知的財産高等裁判所が東京高等裁判所の特別支部として設置されました。
東京高裁裁判所を例に取りますと、同裁判所は東京地方裁判所と同じ建物に設置されており、法廷も地方裁判所の法廷と向い合わせであったりします。
高等裁判所では、主に地方裁判所で下された第一審判決に対する控訴審が行われています。高等裁判所の規模は、その裁判官数・事務職員数ともに地方裁判所よりは少なく、裁判官は、経験年数の長いベテランの方が多く所属しています。
地方裁判所
地方裁判所は、各都道府県の県庁所在地に函館市・旭川市・釧路市を加えた合計50市に本庁が設置されているほか、多数の支部も設置されています(東京地方裁判所立川支部など)。
地方裁判所では、原則的として第一審の審理を行っており、事件の種別に応じて、主に民事部と刑事部が、それぞれ民事裁判・刑事裁判を担当しています。例えば、金額にして140万円を超える貸金の返還を求める訴えを提起した場合には、原則として地方裁判所で民事裁判を行うことになります。また、刑事事件として起訴された場合には、地方裁判所で刑事裁判を受けることになります(なお、罰金以下の刑に当たる罪及び窃盗や横領など比較的軽微な罪の刑事事件については、簡易裁判所が第一審の裁判権を持っています)。
さきほど述べました民事部・刑事部では、裁判官が1人の単独制と、裁判官が3人の合議制による裁判が行われています(裁判所法26条)。
また、地方裁判所では、このような裁判に限らず、会社更生や破産などに関する手続を行っている部もあります(東京地方裁判所民事第20部など)。
家庭裁判所
家庭裁判所は、地方裁判所と同様に、全国50の市に本庁が設置されているほか、多数の支部及び出張所が設けられています。
家庭裁判所では、家庭に関する事件の審判や調停、非行少年の審判などを行っています。例えば、夫婦間で離婚についての話し合いがまとまらないような場合には、まず家庭裁判所に離婚調停の申立てをすることになります。
一般の民事・刑事裁判とは異なり、非公開の手続で、職権主義という裁判所の主導の下で事件が進んでいきます。また、家庭裁判所には、人間科学に関する専門的知見をもった家庭裁判所調査官が置かれており、法律的な解決を図るだけでなく、事件の背後にある人間関係や環境を考慮した解決を目指した体制が用意されています。
簡易裁判所
簡易裁判所は、平成28年時点では全国に438箇所に設置されており、最も設置数の多い裁判所といえます。
扱っている事件についてみますと、通常、第一審は地方裁判所で行われるのですが、請求金額が140万円以下の民事事件や罰金以下の刑に該当する刑事事件など、比較的軽微な事件は、原則として簡易裁判所が管轄となります。
また、簡易裁判所では、通常の民事訴訟のほかに、書類審査のみで行われる支払督促や60万円以下の金銭の支払を求める場合に利用できる少額訴訟(原則1回の審理で行う迅速な手続)、話合いで解決を図る手続として民事調停などの制度も用意されています。
刑事事件や民事事件、法律の絡む事案というのは専門用語ばかりでとても難しいものだと思います。
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