全国には、たくさんの裁判所が存在しています。各都道府県の県庁所在地には必ず地方裁判所が設置されており、この他にも支部が多数存在しています。
ここでは、裁判、特に民事裁判となった時には、具体的にどこの裁判所で裁判が行われるのかについてお話していきます。
管轄
特定の事件について、日本国内のどの裁判所が裁判を行うかという定めを、「管轄」といいます。民事裁判の手続きについて定める民事訴訟法には、管轄として、
①法定管轄
②指定管轄
③合意管轄
④応訴管轄
この4種類が規定されています。以下では、これらの概要について説明していきます。
法定管轄
法律の規定によって直接定まる管轄のことを、法定管轄といいます。そしてこれは、さらに3つに分類されています。
①事物管轄
第一審の裁判所を、簡易裁判所と地方裁判所のどちらにするのかという規定です。この基準は、裁判の目的の価額が140万以下の場合には簡易裁判所、それを超える場合には地方裁判所とされています。仮に、貸した150万円を返してほしいという訴えを提起する場合には、通常は地方裁判所の管轄となります。
②職分管轄
裁判所が行う種々の作用(第一審なのか、第二審なのかなど)に着目して、手続をどの種類の裁判所の役割とするかという規定です。たとえば、地方裁判所の判決に不服がある場合には、高等裁判所に上訴することとされています(一般には、一審判決に不服があって上訴することを控訴と呼んでいます)。
③土地管轄
上の2つの管轄(職分・事物)によって、簡易裁判所・地方裁判所のどちらに対して訴えを提起するかがひとまず決まりますが、今度は、全国各地にある裁判所のうち、具体的にどこの裁判所に訴えを提起するかという問題がでてきます。これを規定しているのが土地管轄です。
ここではまず、訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属するとされており、仮に東京都新宿区にお住まいの方を被告とする場合には、新宿区を管轄する裁判所に土地管轄があるということになります。(被告が法人の場合には、主たる事務所の所在地により定まります。)
このような被告の生活拠点は、事件の種類を問わずに一般的に土地管轄とされ、この拠点は普通裁判籍と呼ばれています。これは、一般的にみて、訴えを起こす側が、被告とされる側の生活拠点に出向くことが公平であるとの考え方に基づいて規定されています。
これに対して、特定の事件の種類について法が認めた裁判籍を特別裁判籍といいます。例を挙げますと、財産上の訴えは義務履行地、不法行為に関する訴えは不法行為があった地、不動産に関する訴えは不動産の所在地に土地管轄が認められるとされています。義務履行地というのは、例えば、横浜市内のある場所に物品を届ける契約をしていた場合には、義務履行地というのは横浜市内のその約束の場所となり、その契約に関する裁判の土地管轄は、横浜市を管轄する裁判所に属することになります。
指定管轄
管轄裁判所が法律上又は事実上裁判権を行うことができないときや、裁判所の管轄区域が不明確で管轄裁判所が定まらないときには、直近上級裁判所(例えば、横浜地裁であれば東京高裁)などが決定で管轄を定めることをいいます。
合意管轄
民事訴訟法では、第一審裁判所に限って、当事者の合意によって裁判所の管轄を定めることができるとされています。この合意には、法定管轄のほかに特定の管轄裁判所を追加する場合と、特定の裁判所のみに専属的に管轄権を生じさせて、その他の裁判所の管轄を排除する場合とがあります。
応訴管轄
原告が、法的に誤った管轄の裁判所に訴えを提起した場合でも、被告がこれに異議を唱えずに裁判に応じると、事後的に管轄の合意があったものとみなして、その誤った管轄の裁判所に管轄権が認められることになります。
まとめ
管轄について、民事訴訟法に規定されているルールは、以上のとおりです。裁判を起こそうと考えた時は、まずは請求したい金額が140万円以下なのか、それよりも大きな金額なのかによって、簡易裁判所なのか地方裁判所なのかが決まってきます。さらに、原則としては、被告となる方の住所地(法人の場合には主たる事業所または営業所)を管轄する裁判所が、管轄裁判所となります。なお、先ほど述べました義務履行地の関係で、原告となる方の住所地を管轄する裁判所に訴えを提起できる場合もあります。
このあたりは、請求したい権利の内容や、紛争の元になった契約の内容によって変わってきますので、専門家である弁護士にご相談されるのが良いでしょう。
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