このような疑問をお持ちの方は比較的多くいらっしゃると思います。
この事自体、端的にいうと、残業代を支払わない会社が多いということを示しているのだと思います
ここでは、未払いの残業代を請求するにあたって覚えておいて欲しいポイントなどについてお話ししていきます。
厚生労働省の統計では、平成20年度(2008年度)以降、都道府県労働局や各地の労働基準監督署にあるワンストップの相談コーナーに寄せられた相談件数は100万件を超えていますし、「指導、助言」の対象となる相談も1万件近い状況が続いています。中身については非公表ですが、残業代に関する相談も多いと思われます。
残業代請求をするポイント
1、 大事なことは、残業代請求の根拠になる「証拠」をできるだけ集めることです。
2、 最も大事な証拠は、実際の出勤、退勤時刻を証明する資料です。これが全く無いと請求するのは難しいです。残業時間中の勤務状態を示す資料(勤務日報など)があるとよりよいです。
3、 そして何よりも労働問題に強い弁護士へ依頼することです。
残業をめぐって明らかに「違法」だとされる中には、こんな例があります。
1、「うちの会社では残業代は出ない」と説明している。最初から残業代カットする。
これは、違法です。
仮に雇用契約書にそのように書いてあっても違法な契約として無効になります。
2、定時になると、勝手にタイムカードを押して(あるいは押させて)、残業代を払わない。
これも違法です。
3、残業時間の上限を「◯時間まで」と勝手に決めてそれ以降の残業代をカットする。
これも違法です。
こうした例以外に、
4、「うちの会社は年俸制だから」「フレックスタイム制だから」「みなし労働時間制だから」「裁量労働制だから」などの理由で残業代をカットしているものの、法律が定める手続きととっておらず違法な運用をしているケースも多いです。
また、違法か合法かはっきりしないグレーゾーンとして、
<残業せずに(させずに)、自宅に仕事を持ち帰っている場合>があります。
自分で判断して持ち帰っている場合は、残業として認められない場合が多く、法的な請求はなかなか難しいところです。
残業代を請求できる根拠となる法律は、労働基準法です。
この法律は、労働者保護のための法律ですが、残業代を請求するための証明は残業をしたあなた自身がしなければなりません。
これを「立証責任」と言いますが、立証責任はあなた自身にあるわけです。
どんな証拠が必要かというと、あなたが雇われていたことを示す書類や働き方のルールを定めた書類です。
例えば「雇用契約書」や「就業規則」、「賃金規程」などです。
次に、実際に残業したことを証明する資料が重要です。
1、 タイムカード、勤務日報、勤怠記録
2、 残業を指示するメール
3、 残業を記録した手帳など手元記録
1だけで、残業が十分立証できる場合はそれで良いのですが、会社が労働者の労働時間をきちんと把握していない例も多いですし、実際に退勤した時刻でない時刻をタイムカードで打刻させる会社もあります。その場合は、2、3が有効です。会社で仕事に使っているパソコンのログオフ時刻、会社のアカウントでのメール送受信記録、終電後まで仕事をしてタクシーで帰宅したときの領収書(乗車時間帯が記録されるケースが多い)、個人的な業務日誌、手帳なども証拠になります。会社のアカウントから個人のメールアドレスに、日々の退勤時刻を送信しておくことも有効です。
そして、残業時間中に働いていることを立証する資料をできるかぎり集めましょう。腹が立つかも知れませんが、会社側が「遅くまで居ただけで働いていない」と弁解することは、よくあることなのです。
残業中の業務内容が分かるような資料、そうでなければ、残業を指示した書類やメールなどがあれば良いです。
もし、上記のような資料が何も集まらない場合でも「労働時間を適正に把握するため、労働者の始業・終業時刻を確認し、記録すること」が使用者(会社)には求められますので、手がかりはあります。しかし、「残業代の未払い」の証明は、請求者本人がしなければなりません。この部分(残業代の計算)が複雑で難しいため、労働問題に強い弁護士に相談しましょう。
そこまで立証する資料が集まった場合、あなたが取るべき方法はいくつかあります。会社側に法令遵守の意識があるならば、会社と直接交渉し、話し合いによる解決も可能です。
しかし、そうでない場合どうするのかはあなた次第です。会社に在職しつつ請求するのか、それとも辞めてから請求するのかにもよりますが、一般的には会社を辞めてから請求する方が多いといえます。
■労働基準監督署に相談する
行政機関ですので、無料での相談や会社に指導等してくれますが、あなたのために会社と交渉したり、強制的に残業代を支払わせるようなことまではしてくれません。
■労働組合に相談する
企業単位の組合だけでなく、「一般労働組合」と言ってひとりでも入れる組合があります。団体交渉といって、会社と交渉してくれ、ますが、話し合いがまとまらない場合もありますし、弁護士ではないので裁判手続を代理してくれることはありません。
■労働審判や裁判を起こす
労働審判や裁判はひとりでも起こせますが、手続が専門的になりますので、弁護士に依頼することをお勧めします。これらの手続で和解や判決を得た場合、強制執行をすることもできます。
あなたがどの方法を取るのかあなた次第でもありますし、あなたを支えてくれる人たちとの相談事でもあります。
何か行動を起こす前に、労働問題に明るい弁護士へ相談することをおすすめします。
琥珀法律事務所では、電話相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。